室内で野菜を育てみたいと思ったら、市販の水耕栽培装置を購入するのが簡単です。今はLEDライトで光を当てるタイプが主流ですので、消費電力などを気にせずに使うことができます。私も一時期、水耕栽培装置を買ってみようかなと思い、いろいろ調べてみました。その結果分かったのは「装置が高価で、元を取るのに時間がかかってしまう」ことです。
装置本体は安いものでも8000円、高いものでは2万円を超えます。例えばホウレンソウを30日で育てると仮定すると、装置代を回収するのにかなりの年数が必要となってしまいます。趣味なのでコストを考えるのもナンセンスですが、もし水耕栽培に飽きてしまった場合、高価なゴミになってしまうリスクもあります。このような理由で今は低コストでできるベランダ水耕栽培で野菜を育てています。
ちょうど今の季節は冬。この時期は気温が低いため、野菜を育てるのにはあまり向いていません。こんな時こそ、室内で育てることができる水耕栽培装置があると便利ではないでしょうか。一度は諦めましたが、要は「箱と光源」があれば作れそうです。ラッキーなことに、家を見渡すとちょうど良さそうな一斗缶を発見しました。そこで今回は、一斗缶を利用して水耕栽培装置を自作してみました。
水耕栽培装置を作るにあたって用意するものは主に2つです。まず1つ目は光源である「LEDライト」です。私が購入したものは丸い電球型ではなく、直管型のものです。一般的なデスクライトは光が白色ですが、このライトは植物育成用で紫に近いピンク色をしています。
そしてもう1つが、容器として使う「一斗缶」です。野菜の取り出しがあるため、蓋付きのもの選びました。一斗缶は売ってもいますし、運が良ければ食品工場などでもらえることもできます。
一斗缶はメッキ加工されているので、中に光源を入れれば反射して効率よく光を使うことができます。また蓋を閉めておけば、真冬でも少しは保温効果がありそうです。そこで一斗缶の中にLEDライトを入れられるように加工していきましょう。
棒状のLEDライトの直径は2cmありました。そこで一斗缶の底部分に直径3cmの穴を開けて、ライトを挿し込むことにします。この穴を開けるために「ステップドリル」と呼ばれる穴あけ道具を用意しました。これを電動ドリルに取り付けて穴を開けます。
実際の作業はこのような感じで行いました。力を入れすぎると刃が食い込んでしまうので、急がずにゆっくりと押すことがポイントです。
2つの穴が開け終わったら、ヤスリがけをしてバリをとっておきます。それでも意外と切断面が鋭く、この状態でライトを挿し込むと傷だらけになってしまいそうです。
そこで保護材として、このプラスチック製リングを穴に取り付けます。
穴にリングをはめ込み、2液混合タイプの接着剤でしっかりと固定をしました。これで容器の完成です。
LEDライトを容器の中に入れてみます。割と面積を取ってしまいますが、専用品ではないのでその点は妥協です。ちなみに装置の上面にある小さな穴は、温度計を刺すためのものです。
さて、装置ができましたので、次は野菜を育てるための培地を用意します。
まずは100円ショップで買ってきたプラスチック製コップの底を切り取ります。そして写真の様に凸凹になるように切れ込みを入れます。予定では凹の部分から野菜の根が広がるはずです。
次にバーミキュライトをお茶パックに8割程度入れて、先程のプラカップと合体させます。
あとは一斗缶に入るサイズのトレーに並べれば完成です。何となく倒れそうでしたので、私は適当なプラスチック板に穴を開けてそこにカップを入れる、転倒防止治具を作りました。
実際に光をつけるとこのようになります。紫の光がしっかりと反射していますので、結構眩しく感じます。LEDライトは白熱電球と比べると少ないですが、発熱してしまいます。そこで蓋を閉めた状態で一斗缶中央部の温度を測定しました。その結果、外気温19.0℃に対して装置内は21.6℃になっていることが分かりました。このくらいの温度でしたら、野菜が弱るような温度ではありません。むしろ真冬であればもう少し発熱してほしいくらいです。
今回作った一斗缶水耕栽培装置の作成金額は、ステップドリルを購入したことを考えても3000円台でできました。一斗缶は家にあったものですし、プラカップとトレーは100円ショップで、LEDライトは2000円台のものをネット通販で購入しました。
見た目が「横に倒した一斗缶」なので、市販の水耕栽培装置のようにはおしゃれではないですが、必要最低限の機能はあるはずです。ただし高さがあまりないので、縦方向に伸びる野菜を育てるのは少し難しそうです。今後、機会を見計らって、この水耕栽培装置で野菜の完全室内栽培に挑戦したいと思います。
【追記】
この装置を使ってミニチンゲンサイを育ててみました。
《自作の水耕栽培装置で「ミニチンゲンサイ」を栽培。上手く育つか心配です》
栽培期間は12~2月の60日、装置を置いた場所は人の出入りが少ない部屋です。実際に育てて分かったことは「結露で一斗缶が錆びてしまう」ことです。
栽培装置は開口部が2箇所しかないため、空気の出入りが少ないです。このせいで野菜から蒸散した水分が外に逃げにくく、さらに外気温が低いため装置の内部で結露してしまうのです。上の写真ですと両側面、特に左側に水玉が多いことが分かりますね。
人気のない部屋なので、暖房をつけることはあまりありません。そのためこの結露が蒸発することなく、1日中湿っています。この状態で育てた結果、一斗缶にサビが出てきてしまったのです。
結露対策としては、
- 栽培装置を温かい部屋に置く
- ファンを付けて中の空気を排気する
- 一斗缶の外に発泡スチロールなどの断熱材を貼る
ことが挙げられます。次回、この装置で野菜を育てる時は結露対策をしたいと思います。
植物用ライトは色がピンクのことが多いです。デスクライトのように当ててもよいのですが、色が色だけに部屋の中が怪しい雰囲気になることが欠点です。そこで今回は蓋をした一斗缶の中で当てることにより、光の漏れを最小限にすることができました。
直径5mm程度の穴ならば、普通のドリルで開けることはできます。しかし数cmとなるとさすがに不可能です。そんな時はステップドリルで開けましょう。分厚い金属板には使用できませんが、一斗缶くらいの厚さならば、簡単に開けることができました。
一斗缶は、B級品のおせんべいの容器としてよく使われています。その他にも乾物や醤油のいれ物としても利用されています。食品加工工場などでは使い終わった一斗缶は捨てるだけですので、分けてもらえることが多いです。地道に探してみれはタダで手に入るかもしれません。