3年間野菜の水耕・半水耕栽培をしてきましたが、手を出さなかったものがあります。それは「根菜類」です。根菜類を育てるには深さが必要なため、培地(バーミキュライト)を大量に用意しなければならず、非常にコストパフォーマンスが悪いのです。
このような理由から、ニンジンや大根の栽培からはできるだけ目を背けていました。しかし先日、とある人のブログを訪れたところ、ニンジンを牛乳パックで育てていたのです。「たった1Lの容器で本当に育つのかな?」と思いながら読み進めると、収獲されたニンジンは市販のものとサイズが変わらず、十分に立派なものでした。この方は土を使って育てていましたが、バーミキュライト+液体肥料に変えても栽培できるはずです。
そこで今回の記事では、牛乳パックを使ってニンジンを半水耕栽培してみようと思います。育てるニンジンの品種は根長が20cmになるものであり、限られた培地量でどこまで大きくなるのか非常に楽しみです。早速、牛乳パックの確保を始めましょう。
- ニンジンの種
- 液体肥料
- 2021年3月5日 種蒔き
- 2021年3月7日 部屋の中に移動
- 2021年3月16日 発芽(発芽から0日目)
- 2021年3月21日 1回目の間引き(発芽から5日目)
- 2021年3月27日 本葉が出る(発芽から11日目)
- 2021年4月3日 2回目の間引き(発芽から18日目)
- 2021年4月11日 病気にかかる(発芽から26日目)
- 2021年4月18日 病気が治る(発芽から33日目)
- 2021年4月24日 置き方の変更(発芽から39日目)
- 2021年5月9日 順調な成長(発芽から54日目)
- 2021年6月5日 培地にイモムシを発見(発芽から81日目)
- 2021年6月20日 元気がない(発芽から96日目)
- 2021年6月26日 少し早い収穫(発芽から102日目)
- まとめ
ニンジンの種
育てるニンジンの品種は「錦洋五寸2号」です。種は長さ2mmと小さく、今まで育てた野菜の中でも細かい分類に入ります。種は薬品処理がされており、色が緑っぽくなっています。
液体肥料
液体肥料には、微粉ハイポネックスを水道水で1000倍に希釈したものを使用します。
2021年3月5日 種蒔き
種まきの前に、まずは栽培容器を作成しましょう。用意するのは中を洗った1Lの牛乳パックです。
牛乳パックの側面下部に直径3mmほどの穴を開けていきます。1面につき3個、合計12個を開けました。
口部分には養生テープを巻き、栽培途中で裂けないように補強します。
これで容器の完成です。今回は同じものを4つ作りました。
次にバーミキュライトを牛乳パックに入れて、液肥で湿潤させます。
ニンジンの種は中央に7個ほどを置き、厚さ5mmくらいとなるように覆土を行いました。
種蒔きが終わった牛乳パックはベランダの明るい日陰に置いて、発芽するのを待ちます。ニンジンの発芽率はあまり高くないので、3つほど芽が出てくれれば良いのですが、どうでしょうか?
2021年3月7日 部屋の中に移動
種を蒔いてから2日目。暖かく風のある日が続いたせいか、培地の乾燥が早く、このままでは発芽に影響出そうです。どうやら牛乳パックは背が高いので、水切れが思った以上に良いようです。
対策として、芽が見えるまでは室内に置き、表面が乾くようならば霧吹きで水道水をかけることにしました。ニンジンの発芽には時間がかかりますから、気長に待ちましょう。
2021年3月16日 発芽(発芽から0日目)
種を蒔いてから約10日で双葉が開きました。本日を「発芽から0日目」として記録をしていきます。ニンジンの双葉は針のように細いのが特徴のようです。
2021年3月21日 1回目の間引き(発芽から5日目)
予想以上に発芽率が良く、蒔いた種のほぼ全てが発芽したようです。このままでは窮屈なため、間引きをしてスペースを開けましょう。
間引きには小さなハサミを使い、成長の遅いものを中心に切っていきます。
これで作業の完了です。本葉が出てくるまでには、まだ時間がかかりそうですね。
2021年3月27日 本葉が出る(発芽から11日目)
発芽から10日が過ぎました。まだ開ききっていませんが、1枚目の本葉が出てきています。順調に成長中です。
2021年4月3日 2回目の間引き(発芽から18日目)
ニンジンは順調に成長をしています。意外と葉が広がるようで、隣の牛乳パックにまで届いている株もあります。それでは2回目の間引きを行いましょう。
元気な株を選んで、残りは切り取りました。今後はこの4株で収穫まで頑張っていきます。
2021年4月11日 病気にかかる(発芽から26日目)
1週間前の前回と比べると、大きくなったのが分かりますね。しかし何やら、葉の一部に不調が見られます。
この様に先端1〜3mmほどが黒くなっているのです。この葉だけではなく、
こちらも同様です。おそらく病気ですのでインターネットで症状を検索すると、「黒葉枯病」とよく似ています。
幸いなことに黒葉枯病は手持ちの農薬『ダコニール1000』が効きますので、1000倍に希釈をして散布しました。これで収まると良いのですが、どうなるでしょうか?
2021年4月18日 病気が治る(発芽から33日目)
前回病気っぽい症状が出ていたため、薬を散布しました。そのお陰で症状が広がることなく本日を迎えています。
新しく出てきた葉には、例の黒い部分は見られません。さすが科学の力はすごいです。
2021年4月24日 置き方の変更(発芽から39日目)
葉がかなり茂ってきました。今は4つのパックを縛っていますが、もうそろそろ1つずつにした方が良さそうです。
ところで、牛乳パックはベランダの床に直接置いています。そのためか水切れが悪く、触ってみると底の部分の紙が柔くなっているように感じます。
そこで風が通る様に、メッシュ状の花かごに入れました。これで水気や湿気が逃げやすくなるでしょう。ニンジンの栽培日数は120日もかかります。途中で牛乳パックが壊れないように、注意して育てていきたいと思います。
2021年5月9日 順調な成長(発芽から54日目)
かなり葉が茂ってきました。そろそろ牛乳パックを1個ずつにバラした方がよさそうですね。
茎は多く出ていますが、まだ根が太くなる気配はありません。成長を見守りましょう。
2021年6月5日 培地にイモムシを発見(発芽から81日目)
前回の報告より、1ヶ月が経過しました。葉がかなり茂っており、全体を写真に収めることができません。それぞれの牛乳パックを分けようと思っていましたが、栽培スペースの関係で、このまま4本を縛ったまま育てていきます。
葉ばかりが大きくなって、本当に根は太くなっているのでしょうか?少し掘り返して確かめてみます。
指先で培地をかき分けていると、何やら固形物が出てきました。よく観察すると丸まっていますが、明らかにイモムシです。小さいならまだしも、それなりの大きさがあります。このまま放置するわけにはいかないので、取り出します。
ピンセットでつまんでも逃げ出す様子はなく、ずっと丸まったままでした。この状態で直径15mmくらいです。おそらく葉に産み付けられた卵が孵化し、その幼虫が培地に潜ったのだと思います。しかし、ここまで大きくなるまでに何を食べていたのか疑問です。葉に食害は見られないので、もしかして根を食べていたかもしれません。
ニンジンの根を確認すると、見える範囲では食べられた跡はなさそうです。ちなみに根は太りつつあり、現在直径2cmくらいとなっていました。ニンジンの栽培期間は120日であるため、あと40日で収穫となります。その時にどうなっているのか分かるでしょう。
2021年6月20日 元気がない(発芽から96日目)
今までは葉の色が濃い緑色だったのですが、最近はその色がくすみ気味となっています。
何かの病気かもしれませんが、見たところでは特に異常はなさそうです。とりあえずは液肥をたっぷりとあげて様子を見ます。
牛乳パックの側面底部には、排水のために小さな穴を開けています。しかし最近、この穴が詰まってしまい、液肥が出てこないことが増えてきました。その時には先の尖ったもので突いて、詰まりを取り除いてあげています。もう少し大きな穴を開けた方が良かったかもしれませんね。
2021年6月26日 少し早い収穫(発芽から102日目)
どうも本格的に調子が悪くなってきました。葉が緑色を通り越して黄緑色になってきてしまいました。薬を使おうにも何の病気か分からないので、手の施しようがありません。
不調とは関係があるのでしょうか?この1週間で新芽にびっしりとアブラムシが付いてしまいました。アブラムシのイメージは緑色ですが、このニンジンで増えているのは淡い青色をしたアブラムシです。近くで見るとツブツブが集合しており、背筋がゾクゾクしてしまいます。
4本の牛乳パックの中で、1つだけ培地からニンジンの肩が露出していました。葉の調子は悪いですが、根はちゃんと太っているようです。
種袋の育て方を読むと、収穫は種蒔きから120日後が目安とのことです。3月5日に種蒔きをしているので、現在は約110日が経過しています。少しだけ早いですが収穫は可能なはずです。それでは4本の牛乳パックを縛っていたヒモを切って、そのうちの1本を取り出しましょう。
まずはこの株を収穫します。左側の葉が黄色になっているのが気になります。
株元の茎を掴んで上に引き上げます。新芽にいるアブラムシのことは気にしないようにします。
おお!思っていたよりも立派なニンジンが出てきました!
周りに付いていた培地を洗い流すと、肌の色は濃いオレンジ色、そして二等辺三角形の形。紛うことなきニンジンです。
表面にある横方向の皺もしっかりとあります。傷はないので、先日見つけたイモムシの影響はなさそうです。この調子で残りの3本も収穫しましょう。
これで収穫の完了です。少し小さめのニンジンもあるとは言え、牛乳パックで育てたのですから十分過ぎるほどです。
ニンジンの葉は食べられるらしいですが、アブラムシがたくさんいるので今回は切り落とします。
断面を見て初めて知りました。茎の中心はオレンジ色なのですね。
収穫したニンジンの根長は14~18cm、重さは108~173gでした。これらのニンジンはカレーに入れたり、焼きそばの具材として食べました。水耕栽培でも土で育てたものと同じ味がして安心しました。
最後に110日間が経過した牛乳パックを紹介します。底の方には液肥成分が析出した白い結晶が付着してしたり、微生物が増えたであろう黒ずみが多々あります。しかし手で引っ張っても簡単には破けなかったので、意外と強度は保っているようでした。
まとめ
それではニンジン栽培のまとめになります。
- 種を蒔いてから双葉が開くまでに、10日ほどがかかりました。牛乳パックには高さがあるので、表面の水切れが良くなりすぎます。培地が乾燥しないように注意しましょう。
- 発芽から90日を過ぎたあたりから、株の調子が徐々に悪くなってきました。そのため予定よりも10日間早く収穫をしました。
- 収穫できたニンジンで1番大きかったものは根長18cm 重量173gでした。味はスーパーで売っているものと変わらなく、とても美味しかったです。
この記事では牛乳パックでニンジンの栽培にチャレンジをしました。最初は牛乳パックが長期栽培に耐えられるのか不安でしたが、破損することなく収穫日を迎えられました。今回のニンジンだけではなく、同じ栽培方法でミニ大根も収穫できました(参考記事:ミニ大根を牛乳パックで栽培中。限られたスペースでどこまで成長するのか確かめます)。品種を選べば牛乳パックでも十分に根菜類を栽培できるようですね。
最後になりますが、本記事が牛乳パック栽培のお役に立てると幸いです。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。