私が野菜を育てる時はホームセンターで苗を買うことは少なく、どちらかと言うと種を買って一から育てる方が多いです。その理由は発芽の仕方や、発芽後の成長を観察するのが好きだからです。
夏に育てる野菜を探しにいくつかのホームセンターに行ったところ、今年は「落花生」を育てることにしました。落花生の実の付き方は実に特徴的です。花が咲いた後、ツルが下に伸びて地面に入り、そこで実ができるのです。
購入した落花生の種袋には、15個の種が入っていました。思っていたよりも数が少ないです。袋の説明では発芽率は75%以上とのことですので、この数ですと計算上は10株程度を育てられることになります。でるだけ多くの苗を作るために一度水に浸し、発根したのもだけを蒔いていく作戦にしました。同じマメ科である枝豆は、水に入れると数日で発根します。きっと落花生も同じでしょう。この時はすぐに苗ができると思っていたのですが、実際はそうではなかったのです…
まずは弁当箱に深さ5mm程度の水を張って種を入れます。念のため全ての種を使わずに、試験的に5個だけにしてみました。この状態で発根するのを待ちます。2日目になると、種の先端から長さ3mmくらいの突起が現れました。もう少しで根が出るかな?と思っていましたが、いくら待てどもその突起は伸びてきません。
さらに数日待ちましたが変化はなく、最終的には全ての種にカビが生えてしまいました。1個も発芽しなかったので、発芽率は0%です。
種袋に書いてある発芽率とあまりにもかけ離れた値でしたので、さらに種を5個使って同じように水に浸して発根を待ちました。浸すと言っても今回はティッシュを使い、種に水が触れる程度にしてみました。
結果は5個中2個が発芽しました。発根率は40%です。残りの3つの種はやはり前回と同じくカビが生えてしまいました。
合計10個の種を発芽させようとしましたが、結局2個しか芽が出ませんでした。発芽率が20%とあまりにも低いため、発芽するための気温が足りていないのかとも考えました。しかし連日25℃を超える夏日ですので、その可能性は少なそうです。
やはり一番の原因は「水分量」ではないでしょうか。ウェブで調べると、《落花生の種を蒔いたら、水やりはあまりしない方が良い》との記述を見つけました。もしかしたら落花生の種を水に浸す方法では、発芽はおろか発根も難しいのかもしれません。例外的に発芽した2つの落花生は、偶然に発根環境が整ったのでしょう。
ここまでで10個の種を使ってしまいました。残りはあと5個です。この種を発芽させない限り、落花生を育てることはできません。水に触れていると発芽しないのであれば、水で種が軽く湿った状態を作り出すことです。そのため適度に水を保持する「バーミキュライト」を使って、最後の発芽試験をしてみることにしました。
2018年5月30日 種蒔き
バーミキュライトをビニールポットに入れて十分な量の水道水を入れます。水がある程度引いたら、落花生の種を深さ約1cmに埋め、日陰に置いておきます。過去の経験から、水を吸ったバーミキュライトは直射日光に当たらなければ、数日間乾くことはありません。
予想では、バーミキュライトに含まれる適度な水が種を発芽に導いてくれるはずです。種が発芽する前には発根している必要があります。そこでちゃんと根が出ているかどうかを確かめるために、数日経過したら掘り返して種の状態を見てみます。
2018年6月2日 発根(種蒔きから3日目)
種を蒔いてから3日が経ちました。試しに掘り返してみると、全ての種から白い根が出ていました。この3日間は水やりを一切していませんので、やはり落花生の種には過剰な水分はご法度のようです。
それぞれの根を確認していると、1つに異常を発見しました。先端が茶色く変色し、一部に腐り落ちたような穴が開いていたのです。もしかしたら部分的に水が多い場所ができ、そのせいで腐ってしまったのかもしれません。これ以上根が伸びるのは望み薄でしたが、もしかしたら…を信じて再びバーミキュライトに埋め戻しました。
2日が経過したので掘り上げてみましょう。するとどうでしょうか。茶色くなっていた部分の根本から、新しい根が出てきていたのです。この種はもう育たないと思っていたので驚きです。
しかし種が発根しても、ちゃんと発芽するかはこの時点では分かりません。そこで根が出た種をバーミキュライトまたは畑の土を入れたビニールポットに埋めて、発芽するのかを確かめます。水は土の表面が乾いた時にたっぷりとあげます。
2018年6月9日 発芽(種蒔きから10日目)
5日後、落花生の種はどうなったでしょうか。上の写真がバーミキュライトに植え替えた種、下が畑の土に植え替えた種です。最終的に発芽したのは5個中4個となり、発芽率は80%となりました。一番最初に行った種を水に浸す方法では発芽率が0%でしたので、飛躍的に数値が改善しました。
畑の土で発芽した種に違和感があったので、よく観察してみましょう。この種には糸みたいなものが付いているのと、芽の右側には大きな穴が開いています。
もう片方の発芽しなかった種はもっと分かりやすく、穴がボコボコと開いており、芽自体が見当たりません。この種は発芽しなかったのではなく、芽を食べられたせいで発芽できなかったのです。
2つの種にはヌラヌラと光る糸状の粘液が付いていますので、おそらくナメクジの食害にあったのだと思います。食べられていなければ、発芽率が100%になったかもしれないのでとても残念です。
2018年6月16日 定植(種蒔きから17日目)
発芽して大きくなった苗を畑に植えてみました。左下の育ちの良い株以外が、今回の試験で発芽したものです。どのくらい収穫できるのか、数カ月後がとても楽しみです。
まとめ
残りの種が5個になってから、やっと落花生の発芽条件が分かりました。それでは今回のまとめに移ります。
・落花生の種を水に浸して発根させる方法は、発芽率が20%だった。
・適度に湿らせたバーミキュライトに種を蒔いた場合、発根率は100%だった。
・バーミキュライトを使って発根させた種の発芽率は80%だった。
今回の試験の結果から、落花生の種を水に浸して発根させるのは非常に難しいことが分かりました。どうも落花生の種は周りに大量の水があると発芽はおろか、発根すらできないようです。そこで適度な湿り気を維持するために、バーミキュライトに埋めてみました。そうすると発根率は100%になり、発芽率は80%となりました。ナメクジに種を食べられなければ、もしかしたら発芽率か100%になっていたかもしれません。
落花生の発芽を上手く誘導するには、水分量を適切に管理する必要があることが分かりました。種を水浸しにすると、カビに餌をやっているようなものです。多すぎず少なすぎず適切な量を守って、元気な落花生の苗を作りましょう。
《参考記事》
あえて土を使わず半水耕栽培で「落花生」を育てています。手間もコストもかかる子です