真っ黒なバスク風チーズケーキ。勇気をもって煙が出るまで焼き続けます

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 このお菓子を初めて見た時の衝撃を今後忘れないことでしょう。一ヶ月ほど前、私はとあるウェブサイトでチーズケーキの土台の作り方を見ていました。よくある構成ですが、ページ最下部には他のレシピのリンクが貼られていました。リンクにはお菓子名とともに写真があったのですが、その写真が黒かったのです。

 最初は薄暗いところで撮影したのかと思ったのですが、灰色ではなく黒なのです。お菓子の名前を確認すると「バスク風チーズケーキ」と書いてありました。あまりにも異質過ぎるお菓子だったので、リンクをクリックして作り方を見てみました。 

 

 

 

 材料を確かめると、クリームチーズに生クリーム、卵、砂糖などです。黒く色付けるようなチョコレートやイカ墨などはありませんでした。今度は作り方を見てみます。泡立てた卵にチーズと生クリームを入れて型に入れます。そうしたら250℃のオーブンで「焦げるまで」焼くと書いてあります。

 私が作ったお菓子の中で焦がすような作業があるのは、プリンのカラメルくらいです。それでも茶色に留め、黒くなるまでは加熱はしません。レシピからはどんな味なのか全く想像が付かなかったので、とりあえず物は試しと作ってみました。

 

材料(直径15cmの型1つ分)
クリームチーズ 100g
生クリーム 100g
プレーンヨーグルト 100g
全卵 1個
グラニュー糖 50g
ふるった薄力粉 10g
土台(この記事を参照)
 

準備
・型の側面に少量のバターを塗り、クッキングシートを貼る
・プレーンヨーグルトは水分が50g出るまで水切りをする。詳細な方法はこの記事を参照

 

作り方
1.ボールに卵にグラニュー糖を入れる
2.とろみが出るまで泡立てる
3.クリームチーズを入れて混ぜる
4.生クリームと水切りをしたプレーンヨーグルトを入れて混ぜる
5.薄力粉を入れて混ぜる
6.型に入れる
7.250℃で焦げるまで焼く(約40分間)
8.完成

 

詳しい作り方

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 ボールに卵とグラニュー糖を入れて、もったりとするまで泡立てます。この時、電動ハンドミキサーを使えば数分でできがります。《もったり》の固さは写真のように、生地を落とすと1秒間ほど跡が残るくらいです。

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 各材料を混ぜた生地を型に入れます。型の側面にクッキングシートを貼り付けておくと、焼き上がった時に取り出しやすくなります。焼いていると生地が膨らんできますので、クッキングシートは型の高さよりも高くしておきましょう。

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 オーブンで焼く時は生地を焦がすために、最初から250℃で開始します。焼け具合を確認するためにオーブンの扉を開けると、煙が出るくらいしっかり焼きます。途中で「こんなに焦がして大丈夫だろうか…」と不安になりますが、ぐっと我慢して焼き続けます。我が家のオーブンでは焼き上がるまでに40分程度かかりました。焼いている時にする臭いは焦げ臭ではなく、ほろ苦くて甘いような香りです。それほど不快ではないですが、換気扇を回すのは必須です。
 もしもっと早い段階で十分な焦げができた場合には、温度を180℃くらいに落として中心部分まで火を通します。

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 焼き上がったチーズケーキは上面が真っ黒に焼け焦げています。側面は良い感じの焼き色です。参考にしたレシピでは側面も黒焦げになっていました。しかしオーブンの種類が違うのか、その状態を再現することはできませんでした。

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 では切り分けてみましょう。焦げ部分に包丁を入れると今までに聞いたことのない、キュッキュッといった音が鳴りました。本当に大丈夫なのでしょうか...

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 断面図を見ると、焦げ部分の厚みはだいたい3mmになっていました。熱の当たっていた最上部は小さな穴が開いていて、完全に焦げています。今までのお菓子作りでは焦げないようにアルミホイルを掛けたりしていましたが、積極的に焦がすこの方法は私の中では初体験です。

 では、最も重要な味を確かめましょう。見た目からのイメージでは、かなり大人なビターでスモーキーな味に違いありません。早速、フォークを使って一欠片を口に入れてみました。見た目とは裏腹に焦げ臭や苦味はそれほどありません。むしろ苦味と風味が、焦げていない中心部分の甘さと上手くマッチしています。味自体は至って普通のベイクドチーズケーキで、これと言ったコメントができないのが残念です。焦がした上面部分は、土台のクッキー生地のような食感になっており、上と下どちらもサクサクでした。

 総合的な感想は、見た目ほど変な味のお菓子ではない、ということです。外観の印象が強すぎて食べる時に身構えてしまいますが、食べると少しビターな普通のチーズケーキです。ふと思ったのが、このお菓子は自分で作って食べるよりも、そのインパクトを利用してパーティーなどで出すと注目を浴びるのではないでしょうか。「え...この人、こんなに焦がした失敗お菓子を出すの…?」からの「焦げてるけど、美味しい...」のギャップを使うのです。そうすれば話題がこのチーズケーキ一色になるでしょう。

 今回、バスク風チーズケーキ作りにチャレンジしました。コツは勇気をもって、真っ黒になるまで焼くことです。「お菓子は焦がさない」という今までの常識が覆るような作り方です。このベイクドチーズケーキを食べながら、世界にはすごいお菓子もあるものだなとしみじみ感じました。皆様もぜひ一度作ってみてはいかがでしょうか。

 

【追記】
先日、新しいバスクチーズケーキのレシピを公開しました。個人的には、こちらの方がしっとりとしていて好みの口当たりです。