今年も霜が降りる季節が過ぎ、種蒔きのシーズンに入りました。と言ってもまだ朝晩はコートが必要なので、発芽温度の高い夏野菜の種蒔きはあと1ヶ月くらい先です。そこでこの隙間期間を使って、低温でも芽が出る葉物野菜を育ててみようと思います。やはり最初に思いつくのは「水菜」です。種を蒔けば1か月強で収穫でき、また厳寒期を除けばいつでも育てることができるからです。
水菜の種は2年前に購入したストックがあるので、いつでも育てることができます。この品種は一般的なもので、特に変わっている点はありません。昨今の野菜は、品種改良により様々なタイプが生まれています。そこで大きめのホームセンターに行き、何か面白い水菜の品種かないか探すことにしました。そして見つけたのが、紫色の水菜『紅法師』です。葉は普通の品種と同じ緑ですが、茎が濃い赤紫をしているのです。種袋の説明によれば、この色は赤ワインなどに含まれているアントシアニンによるものとのことです。
見た目は毒々しい印象を受けますが、早速この水菜を育ててみましょう。そして普通の水菜との成長具合や、どのように味が違うのかを確かめてみたいと思います。
- 紅法師の種
- 栽培装置&液体肥料
- 2019年3月17日 種蒔き
- 2019年3月18日 1つが発芽しそう
- 2019年3月20日 発芽(発芽から0日目)
- 2019年3月23日 1回目の間引き(発芽から3日目)
- 2019年3月30日 何者かに食べられる(発芽から10日目)
- 2019年3月31日 ミニトンネル作り(発芽から11日目)
- 2019年4月6日 2回目の間引き(発芽から17日目)
- 2019年4月13日 寒さで成長が鈍る(発芽から24日目)
- 2019年4月20日 再び鳥害に遭う(発芽から31日目)
- 2019年4月27日 来週に収穫予定(発芽から38日目)
- 2019年5月2日 アブラムシの駆除(発芽から43日目)
- 2019年5月3日 食害により収穫(発芽から44日目)
- まとめ
紅法師の種
紫色の水菜なので種は赤いと思いきや、ごく普通の水菜の種です。直径2mmほどの球形で、色は茶色をしています。
栽培装置&液体肥料
水耕栽培装置はこの記事《底面給水式の水耕栽培装置を改良。水面が低下しても液肥が供給されるようにしました》のものを改良し、6株を育てられるようにしました。
液体肥料として、微粉ハイポネックスを水道水で1000倍に希釈したものを使います。
2019年3月17日 種蒔き
まず最初に、バーミキュライトを液体肥料で湿潤させます。そして種を一つまみ分置き、厚さ数mmとなるように覆土をしました。この栽培装置を南向きのベランダに置いて発芽するのを待ちます。
2019年3月18日 1つが発芽しそう
先行して、1つの種が地上に出てきました。種袋の写真では紫色の水菜ですが、この時点では色がなく全体がクリーム色をしています。日光に当たると色が変わるのでしょうか?数日後には答え合わせができそうです。
2019年3月20日 発芽(発芽から0日目)
本日、無事に発芽しました。発芽率は良く、蒔いた種のほぼ全てから芽が出ました。
双葉の表面は緑色をしていますが、裏面や茎は紫色となっています。観察をして分かったのは、この水菜は発芽直後は色がなく、日に当たると急激に色付くということです。
今日を発芽「0日目」として、何日間で収穫できるのか記録を付けていきましょう。
2019年3月23日 1回目の間引き(発芽から3日目)
発芽から数日が経過し、葉が大きくそして緑色が濃くなってきました。
双葉が成長し、隣の株と触れ合ってきたので1回目の間引きを行いましょう。1カップあたり10個くらいの株の中から、元気の良さそうなものを数株残してあとは間引きます。
密集して育っているので、指で間引くのはかなり難しいです。そのため作業には小さなハサミとピンセットを使いました。
元気な株を4つずつ残し、1回目の間引きは終了です。次の間引きは本葉が大きくなった頃です。水菜の成長は早いので、もしかしたら数日後になるかもしれませんね。
2019年3月30日 何者かに食べられる(発芽から10日目)
家に帰ってくると、かなりショックなことが分かりました。それは水菜の苗が何者かによって食べられていたのです…6カップ中4つが全滅、1つが半壊、そして残りの1つのみが無傷でした。朝の時点では何事もなかったので、犯行は昼に行われたのだと思います。
左側のカップが食べられなかったのは、ベランダの柵のせいで近付きにくかったのかもしれません。この食べ方から推察するに、犯人は「鳥」ではないでしょうか?
大きく成長していた双葉は食べられ、無残にも茎しか残っていません。成長点がなくなった水菜はもう大きくなることはできません。そのため茎を抜き取って、新たに種を蒔きました。
犯人は再び戻ってくるかもしれません。応急処置として不織布を掛け、苗との接触を防止しました。明日は休日ですので、もっとしっかりとした対策をしたいと思います。
2019年3月31日 ミニトンネル作り(発芽から11日目)
昨日は一時的な対策として、不職布をベタ掛けしました。しかしこれでは水菜の頭が抑えられ、成長の邪魔になってしまいます。そこで上に十分な空間ができるように針金で支柱を立てて、小さいトンネルにしました。
これで食害対策はバッチリなはずです。蒔いた種がある程度の大きさになるまでは、この中で育てていこうと思います。
2019年4月6日 2回目の間引き(発芽から17日目)
トンネルを立ててから1週間が経過しました。効果は十分なのか、被害は全くありません。生き残った左側の株は本葉が何枚か出てきています。また、蒔いた種は発芽して双葉が開きつつあります。
それでは最後の間引きをしましょう。1カップあたり1株を残しますので、成長が一番良いものを選び、それ以外は切り取ってしまいます。
発芽した水菜も少々数が多いので、4株となるように間引きをします。
間引き後はこんな感じになりました。週間天気予報を確認すると、これからは夜も10℃を下回ることはなさそうです。水菜の成長が一気に進みますね。
2019年4月13日 寒さで成長が鈍る(発芽から24日目)
今週は暖かくなるはずでしたが、まさかの冬の寒さが戻ってきました。特に水曜日あたりは日中にもかかわらず温度が5℃で、厚手のコートが必要なくらいでした。
それでも株元からは新しい葉が出てきており、少しずつですが大きくなっています。葉は緑色ですが、茎だけは紫色になっているのが不思議でなりません。
新しく蒔いた種は、ようやく本葉が見えてきました。もう少し大きくなったら間引きをして、1株にしたいと思います。
2019年4月20日 再び鳥害に遭う(発芽から31日目)
最近は日中の気温が20℃を超える天気が続いています。そのおかげで先週よりも2倍位大きくなりました。
一般的な水菜の場合は、根本からたくさんの葉が分岐してきます。しかし紅法師はまだ中心部からしか伸びてきていません。これからどう育つのか楽しみです。
新たに種を蒔いたカップは、先日間引きをして1株にしました。現在、本葉が2枚となっています。
偶然にも今、普通品種の水菜も同時に育てているので比較をしてみましょう。
写真の左側が紅法師、右側が普通品種となります。茎の色を除いた大きな違いと言えば「葉」です。葉を指でつまむと紅法師の方が肉厚で、また縁のギザギザ度合いも粗いです。同じ水菜でもこのような違いがありました。
ところで以前、発芽したての苗を鳥に食べられてしまいました。そこで対策として、写真のような感じで防鳥ネットを掛けていました。
しかしある日の朝、2カップ分の苗がなくなっていたのです…おそらく網の隙間からクチバシを差し込んだのでしょう。ただし葉が落ちていたことから、ネットがあるせいで身体を近付けることができず食べ切れなかったようです。
そこで不織布で栽培装置を覆い、さらにその上に防鳥ネットを掛けました。これで鳥は苗へのアクセスがかなりやり難くなるはずです。
障害物があるにも関わらず、鳥が2回も食べに来るとは思いませんでした。食べられてしまったカップはもう種を蒔かずに、栽培が終わるまでそのままにしておく予定です。
2019年4月27日 来週に収穫予定(発芽から38日目)
紅法師は1週間たつごとに倍の大きさになっています。株の横幅は栽培装置を優に超え、30cmくらいまで成長しました。今思えば、同時に6株も育てたら大変な密集度合いになっていたかもしれません。
株元の分岐も増えてきており、水菜らしい茎となっています。この調子で成長すると、来週には収穫ができそうです。
2019年5月2日 アブラムシの駆除(発芽から43日目)
紅法師は順調に育っています。ここ数日でさらに茎が増えましたので、より水菜らしい姿になりました。
前回の写真を見ると、中心部分の茎は白に近いピンク色でした。しかし今では濃い紫色となっています。もしかしたら太陽が当たることで色付くのかもしれません。
ところで眼を凝らすと、若葉に何か小さい粒がたくさん付いているような気がします。
その何かとはアブラムシでした。育ち切った葉よりも、この様に若い部分が好みみたいです。
退治をしたいですがあと数日で収穫なので、散布期間に制限のある化学農薬は使えません。そこで収穫前日でも使える『アーリーセーフ』を水道水で500倍に希釈し、株全体にたっぷりとスプレーしておきました。
この薬はヤシの油から作られているので安全性は高いです。しかし激的な効果はないので、毎日散布して少しずつアブラムシの数を減らしていきたいと思います。
2019年5月3日 食害により収穫(発芽から44日目)
朝起きたらまずベランダに行き、水耕栽培をしている一角を巡回するのが私の日課です。他にも野菜を育てていますが、この紅法師は色が鮮やかなので、まず最初に目に入ってくる野菜です。しかし今日は何か違和感がありました。なぜか昨日よりも小さくなっている気がしたのです。
もしやと思い近付いて見ると、昨日まであったはずの新芽がごっそりとなくなっているではありませんか!体感としては、半分くらいの葉がありません。通りで小さく見えたわけです。
今まで大切に育てていた2株だけではなく、新しく種を蒔いた2株も中心部の枝が全くありません。鳥が再び食べたのでしょうか?
しかし今は鳥が入れないように、防鳥ネットを張っています。カラスのような大型な鳥だけではなく、おそらくスズメも入れないでしょう。そのため、今回の犯人は鳥ではなさそうです。
被害を受けた株を観察すると、葉の部分のみが食べられており、茎の部分は残していることが分かりました。
また栽培装置の上には、食べ残した茎が散らばっています。もし鳥だとしたら、この様に茎だけ残す器用な食べ方ができるでしょうか。葉のかじられた痕から、なんとなく小動物のような気がしてきます。
一つ思い当たるふしがあるとするならば、それは「ネズミ」です。昨年、家の塀の上でネズミが走っているを見たことがあります。もしかして雨樋などを伝ってベランダに侵入し、野菜を食べたのでしょうか?
犯人探しは後でするとして、あと1日で収穫だった水菜を食べられてしまい、精神的ダメージは大きいです。再び同じ大きさに成長するまで、3週間くらいかかもしれません。
これ以上置くと葉が固くなりそうなので、不本意ですが収穫してしまいましょう。ハサミを使って犯人が食べ残した葉を収穫していきます。
これにて収穫完了です。予定ではこの数倍の量が取れるはずでしたが、今回は食べに食べられて、片手で収まる程度にしかなりませんでした。量はともかく紅法師は鮮やかだったので、物珍しさもあり収穫していて楽しかったです。
茎の部分は紫色ですが、決してクドい色調ではありません。どちらかと言うとピンクに近い色です。茎は思っていたよりも太く、普通の水菜の2~3倍はありそうです。どちらかと言うとホウレンソウの茎に似ています。
この収穫した水菜をどう調理しようか考えました。色が鮮やかなのでサラダに使おうと思いましたが、葉が厚く、また茎が太いので合わないかもしれません。そこでお湯でさっと茹でて「おひたし」にすることに決めました。茎が赤いこの水菜ならば見た目も良くなりそうです。早速お湯を沸かして、数分湯がいてみました。
そしてできたのが、こちらになります。予想に反し、加熱したことで鮮やかな赤紫色が失われ、どす黒い色となってしまいました。ちょっと食欲がでなさそうな色です。と言っても育てて調理した手前、食べないわけにはいきません。
まず茎の部分は思った通り、しゃきしゃきとした歯ごたえが強いです。味に癖はなく、色の割には普通の水菜と同じでした。次に葉の部分です。数分の加熱時間でしたが、十分に柔らかくなっていました。こちらも味は普通ですが、少し苦味を感じました。
紅法師を調理して分かったのは、「加熱をしない方が良い」ということです。浅漬けにしたり、もう少し小さいうちに収穫してサラダに使うと鮮やかな色のまま使えると思います。本当は他の調理方法も試したかったのですが、間違えて全量をおひたしに使ってしまいました。機会があれば、次は非加熱で食べてみたいです。
まとめ
それでは紅法師の栽培まとめになります。
- 紅法師は発芽から44日で収穫となりました。途中で食害にあったので、これがなければもう少し早く採れたかもしれません。
- 普通の水菜と比べると、茎が太く、葉の密度が低い印象を受けました。また横に広がる傾向があったので、株の間隔を広く取って栽培すると良いでしょう。
- 加熱調理をすると、鮮やかな赤色が退色してしまいます。生で食べるか、漬物のような加熱をしない方法で使うのをおすすめします。
今までいろいろな野菜を育てましたが、これほどトラブルの多かった栽培は初めてです。どうやら我が家のベランダには招かざる客がいるようなので、いつか正体を暴きたいと思います。
食べられたことを除けば、紅法師は簡単に大きくなるので、初心者向きの野菜と言えるでしょう。普通品種の水菜と一緒に育てるのも面白いかもしれません。ちょっとめずらしい品種である「紅法師」、あなたも育ててみてはいかがでしょうか?