プラカップ式・継ぎ手式で行った水耕栽培の結果を考察。新鮮な空気と根が触れ合うスペースが大切です

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 2018年と2019年で多くの野菜を水耕栽培しました。上手く育った水菜やカブ、病気で撤収せざるを得なかったマクワウリなど、 色々な思い出があります。

 実はこの2年間の栽培を通して、少し気になっていることがあります。それは2018年は順調に野菜が育ったのに、2019年は成長が滞り気味だったのです。また2018年では全く起きなかった根腐れが、2019年になると多発したのも妙です。

 これらの年の違いと言えば、栽培装置の仕様です。2018年は「プラカップ式」、2019年はプラカップ式を改良した「継ぎ手式」を使いました。今回の記事では、水耕栽培装置の違いによる野菜の成長度合いについて考察したいと思います。

 

 

 

 水耕栽培とは液肥を使って野菜を育てる方法です。栽培装置には色々な種類があり、大まかに分けるとポンプを使って液肥を動かす「アクティブ(流動)栽培法」と、その反対に位置する「パッシブ(静置)栽培法」になります。私は装置構造が簡単なパッシブ栽培法を主に使って育てています。

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 2018年に使っていた栽培装置は『プラカップ式』です。この方式は200mL前後のプラスチック製カップにバーミキュライトを詰めて野菜を育てる装置です(参考記事:底面給水式の水耕栽培装置を改良。水面が低下しても液肥が供給されるようにしました)。使っていて特にこれと言ったトラブルはなく、色々な野菜が大きく育ちました。

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 翌年の2019年に使ったのが『継ぎ手式』です。これはバーミキュライトを節約するために、プラカップよりも直径の小さい水道管の継ぎ手を利用して作成しました。つまりプラカップ式の改良版です(参考記事:水道管の継ぎ手を利用した水耕栽培装置。これで培地のコストが少なくなるはずです)。

 この継ぎ手式装置で野菜を1年間育てました。改良版のはずだったのですが、プラカップ式と比べると成長が遅かったり、収穫物が小さめなことが多かったです。さらに根腐れが多く発生し、頭を悩まされました。

 成長度合いや根腐れに関しては、2018年と2019年の気候の差と言われればそうかもしれません。しかし体感としては確かに違いがあるのです。プラカップ式も継ぎ手式も同じ5Lの食品保存箱を使い、液肥はどちらも微粉ハイポネックス。またエアレーションなしのパッシブ栽培です。ほぼ同じ仕様の中で唯一の違いは、充填するバーミキュライトの《量》です。

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 プラカップ式では乾燥したバーミキュライトが18g入ります。一方で継ぎ手式では2gと少量です。バーミキュライトの量が多いと、その部分に伸びる根も多くなります。もしかしたら私の栽培環境では、バーミキュライトの量、つまり液肥より上にある根の量が野菜の成長に影響を与えているのかもしれません。

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 実際の根張りを写真で見てみましょう。バーミキュライトが多く入るプラカップ式は、一旦その場所で根を伸ばし、その後に液肥槽へたどり着きます。

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 反対に継ぎ手式はバーミキュライトが少ないので、ほぼ素通りして液肥槽へ行ってしまいます。そうなると根の大部分が液肥に浸かることになります。

 液肥を循環させないパッシブ栽培法では、根の一部を空気と触れさせる必要があります。2018年と2019年の成長状況より、バーミキュライトが2gしか入らないほどの空間では、根と空気の接触面積が少なかった可能性があります。また継ぎ手式栽培装置は気密性が高いので、根に新鮮な空気が供給されにくい問題もあります。成長不良だけではなく根腐れを起こした原因も、この新鮮な空気と根との接触不足が関係がありそうです。

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 もちろん急にプラカップ式→継ぎ手式に変えたわけではありません。両方の方式を使い、水菜の栽培試験をした上で採用しました。(参考記事:水道管の『継ぎ手』で水菜を水耕栽培。従来式と一緒に育てて、差が出るか確認します)。試験の結果、どちらの方式でも大きな差は見られなかったので、より低コストである継ぎ手式に切り替えました。しかしその年に育てた野菜の成長は芳しくありませんでした。

 この理由として、水菜は根と空気が触れ合う面積が少くても成長に影響し難い野菜であること。またプラカップと継ぎ手を1つの容器に混在させていたので、結果が変わってしまったことが挙げられます。今更ですが、実際に行う栽培と同じ条件にして試験をするべきでした。

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 過去2年間の経験より、今年(2020年)の栽培は、継ぎ手式→プラカップ式に戻すことに決めました。しかし継ぎ手式の開発はまだ諦めてしていません。今度はエアレーションと組み合わせて栽培をしてみます。アクティブ栽培法に変えることで、バーミキュライト量が少なくても根に空気を供給できるのではないかと考えています。

  良かれと思ってバーミキュライトの量を減らしたら、野菜の成長が滞るようになってしまいました。よく言われるように、野菜の成長には根と空気の触れ合いが大切なことを1年間かけて学びました。もしパッシブ栽培法で成長に悩んでいる方がいたら、空気と根の触れ合う面積を確かめてみましょう。成長が改善するかもしれません。

 

【追記】

記事を書き終わった後に気付きました。2019年11月22日にほぼ同じ内容の記事を書いていたのです…良かったらこちらもお読み下さい。

水耕栽培で起きる根腐れについて。根と空気の触れ合う面積が大切なのかもしれません