2年前の秋、水耕栽培で赤カブを育てました《参考記事:カブの一種「もののすけ」を水耕栽培。物珍しさに惹かれたので育ててみます》。2ヶ月ほどで美味しいものが収穫できたのですが、見た目に関して気になる部分がありました。それはカブの皮にできた細かいひび割れや、不均一な色の濃淡です。
この現象はおそらく、根の肥大化が地上で起きたためだと思われます。乾燥や直射日光にさらされた結果、表面が傷んで見た目が悪くなってしまったのです。ちなみにスーパーで売っているカブがきれいなのは、株元に土寄せをしているからです。この作業によって光を遮断し、さらに適度に加湿されるので、表面の傷みを防ぐことができます。
そこで思い付きました。水耕栽培でも土寄せと同じことをすれば、美しいカブが収穫できるのではないでしょうか?方法としては、まず培地をプラカップの半分ほど入れて種を蒔き、成長させます。株元が太くなってきたら「培地を追加」して、実の部分を保護しつつ収穫まで待ちます。
栽培は口径6.5cmのプラカップの中で行うので、育てる品種は小カブが良いでしょう。頭の中では上手く収穫できたので、現実ではどうなるのか実験してみます。それでは栽培のスタートです。
- 小カブの種
- 水耕栽培装置
- 液体肥料
- 2020年4月26日 種蒔き
- 2020年4月29日 発芽(発芽から0日目)
- 2020年5月2日 1回目の間引き(発芽から3日目)
- 2020年5月5日 2回目の間引き(発芽から6日目)
- 2020年5月9日 肥大化はまだ(発芽から10日目)
- 2020年5月16日 土寄せ(発芽から17日目)
- 2020年5月29日 殺虫剤の散布(発芽から30日目)
- 2020年6月5日 収穫(発芽から37日目)
- まとめ
小カブの種
種は直径1.5mmの球形をしています。品種は『新金町かぶ』で、根の太さが3〜8cmになったら収穫できるとのことです。
水耕栽培装置
栽培装置はこの記事《底面給水式の水耕栽培装置を改良。水面が低下しても液肥が供給されるようにしました》を参考にして組み立てました。
通常はカップの7割ほどバーミキュライトを入れるのですが、今回は半分弱にします。株が大きくなってきたら残りのバーミキュライトを足す予定です。
液体肥料
液体肥料には、微粉ハイポネックスを水道水で1000倍に希釈したものを使用します。
2020年4月26日 種蒔き
種は1カップあたり4~5個を蒔きます。アブラナ科の野菜は発芽率が良いので、あまり多く蒔くと株間が詰まり、間引きの時に苦労するので注意です。
種蒔きが終わった栽培装置は日の当たる屋外に出して、発芽するのを待ちます。
2020年4月29日 発芽(発芽から0日目)
双葉が開いたので、本日を「発芽0日目」として記録を取っていきます。発芽率はほぼ100%と、アブラナ科の種らしい結果でした。
発芽したカブは小さいので、害虫に食べられると跡形もなくなってしまいます。そこで栽培装置に針金で作った支柱を取り付け、その上から防虫ネット(不織布)を掛けました。この状態で大きくなるのを待ちます。
2020年5月2日 1回目の間引き(発芽から3日目)
双葉が大きくなってきたので、1回目の間引きを行いましょう。
特に種を5個蒔いて、全てが発芽したカップはかなり窮屈な状態となっています。この中から成長の遅いものや葉が欠けているものを選び、株元から切り取っていきます。
1カップに付き3株を残して、1回目の間引きは終わりです。カブの成長は早いので、数日後には2回目の間引きとなりそうです。
2020年5月5日 2回目の間引き(発芽から6日目)
前回から3日間しかたっていないのに、もう本葉が2枚となっています。それでは予定通り2回目の間引きを行います。
3株の中で一番成長の良いものを残し、間引きは終了です。これからは成長を見守るだけです。
2020年5月9日 肥大化はまだ(発芽から10日目)
先日、夏かと思うくらいの日差しが降り注ぎました。日光が蓋を通り抜けて液肥に当たると液温が上がってしまうので、この対策をしましょう。
アルミ蒸着保温シートを蓋の形に切り取り、カップの差込口と同じ大きさの穴を開けます。そして蓋に取り付ければ完成です。このシートにより液肥槽が日陰になるので、液肥の温度が上がりすぎることはないでしょう。
発芽から10日目の株元はまだ膨らむ気配はありません。カブになるにはまだ時間がかかるようですね。
普段より培地の量が少ないせいか、根の出てくるタイミングが早いです。
2020年5月16日 土寄せ(発芽から17日目)
この7日間で一気に葉が茂りました。防虫ネットを張っているので、葉の虫食いは全くありません。
3日ほど前から株元の茎が膨らみ始めてきました。今は直径1cmまで成長しています。
このまま地上で大きくなると乾燥や日光で、皮が荒れてしまうでしょう。そこで予定通りバーミキュライトを追加して、肥大化している部分を保護しました。この部分が育って再び地上に見えてきたら、その都度バーミキュライトを足して地中にある状態を維持します。
2020年5月29日 殺虫剤の散布(発芽から30日目)
光が当たると葉がすぐにシナシナになってしまいます。対策として、午前中だけ直射日光が当たる場所に栽培装置を移動させました。
発芽から30日目の時点で、茎が8本くらい出ています。カブは成長速度が非常に早いですね。今、根本の部分はどのくらいの大きさになっているでしょうか?少し掘って確認しましょう。
追加分のバーミキュライトを入れすぎたせいで、かなり掘りました。この見た目から推察するに、今は直径3.5~4cmです。順調に進めば、来週か再来週には収穫できそうです。
とうとう葉にチョウの卵を発見してしまいました。放置するとアオムシが葉を穴だらけにするでしょう。そこで展着剤を加えたゼンターリ顆粒水和剤(1000倍希釈)を散布しておきました。この薬は微生物から抽出した成分でできており、アオムシに対して劇的な効果があります。収穫まであと十数日。頑張ります。
2020年6月5日 収穫(発芽から37日目)
カブの葉はかなり茂り、上からだと栽培装置が見えないほどです。
アオムシ対策の薬を散布したため、かじられた葉は少ないです。その一方で、数日前からハダニの被害が増え始めました。大群になって汁を吸うため、葉の裏が煤けたようになっています。
株元は今このようになっています。最初に出てきた葉は寿命を迎え、黄色くなっています。プラカップの中はどうなっているでしょうか?
掘り返すと、肥大化がかなり進んでいるのが分かります。前回はカブとカップの間に隙間がありましたが、現在は指が入らなくなっています。ちょうど良い大きさになっているので、本日収穫をしましょう。
茎を束ねてつかみ、上へ引き上げます。
スポット抜けました。 培地が付いているので、流水できれいに洗います。
これで小カブの収穫完了です。直径は約5cmと、適度な大きさです。今回の栽培目的は「栽培途中に培地を追加して肌をきれいにする」ことです。結果はどうでしょうか?
予想に反し、思ったよりもきれいになりませんでした。確かにきめ細かい白い部分もありますが、写真のように少々ひび割れて茶色になっているところもあります。培地をただ追加するだけでは、雪のような肌にはならないようです。
ちなみに大きいカブよりも小さなカブの方が肌がきれいでした。肌の状態はカブの直径や成長速度に関係しているのかもしれません。
何はともあれ、残りを収穫しましょう。大きさはバラけてしまいましたが、たった37日でどれも立派な小カブに育ってくれました。
まとめ
それでは栽培のまとめになります。
- 小カブは発芽から37日目で収穫できました。成長が非常に早く、これまで私が育てた野菜の中でもトップクラスのスピードです。
- 日差しが強いと葉がしおれ、それが続くと葉が1枚2枚と枯れていきます。できれば半日陰で育てると良いでしょう。
- 光が当たらず、適度な湿度があれば皮がきれいになると仮定して育てました。しかし実際には肌が軽くひび割れたり、茶色くなっている部分がありました。
今回は肌が美しくなるように、培地を土寄せして育てました。しかし思ったような結果にならず、少し残念です。収穫したカブは漬物として美味しくいただきました。ほんのりと甘みがあって美味しかったです。
この記事が、小カブの水耕栽培をしようと思っている方の参考になれば幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。